せせらぎ街道ツーリング


2006年8月14日〜15日

Member Koyama Yoshinaga






プロローグ

今回のコースは、飛騨高山を基点に、郡上八幡へとつづく「せせらぎ街道」を走り、郡上八幡からは、
長良川沿いに岐阜までのコース。
距離は、高山>郡上八幡が約70km、郡上八幡>>岐阜が約60kmで合計約140km。折りたた
み自転車に、1泊分の荷物を担ぎ、真夏の炎天下での走行となると、途中での1泊が必要となります。
距離的には郡上八幡での宿泊が真ん中となり、また、観光地であることから宿の確保もしやすそうです。
しかし、初日は移動の関係で、走行時間がPMの半日しか取れないこと、高山>郡上八幡には、西ウレ
峠、坂本峠の2つの峠があり、特に西ウレ峠はトンネルも無く標高は1000mを超えており、高山か
ら500m以上登る事になるため、西ウレ峠と坂本峠の間にある清美町の大原で宿を探します。しかし、
ネットで発見した民宿は既に廃業、道の駅に併設されているホテルは既にキャンセル待ちがあるほどの
盛況、他に宿が無いか聞いてみますが、大原地区には無いとのこと。かなりの山奥のようで、ますます
泊まりたくなりますが、諦め郡上市で探します。坂本峠を越えた郡上市の明宝奥住というところにいく
つか宿があることをネットで発見し、めでたく民宿を確保。結局、初日は、高山から西ウレ峠、坂本峠
を超えてすぐの民宿までの約50km、二日目は、民宿から郡上八幡までの約20km+岐阜までの約
60kmの計80kmの予定となりました。お盆に行くにもかかわらず、宿、切符の手配が完了したの
は1週間前。
あとは出発を待つだけ。


8月14日 快晴

今回はリッチに電車でのスタート。しかも、新幹線&特急「ワイドビューひだ」の豪華リレー。
新大阪の新幹線ホームで吉永さんと合流。8:30発の「のぞみ」の車内へ。出張以外で新幹線に乗る
のは何年ぶりかである。

 

名古屋で、高山へ向かう特急「ワイドビューひだ」へ。「ひだ」の車両は、カミンズ社製の350PS
直列6気筒14リッターのスーパーチャージャー搭載の直噴直列インタークーラー付ディーゼルエンジ
ンを1両あたり2基搭載しているハイパワーディーゼルカーで、この車両の登場で、国鉄型ディーゼル
カーの時代より、高山まで30分以上も短縮したそうである。豪快な走りを期待するが、名古屋発車時
の吉永さんの感想は、「なんかバスみたいやなー」であった。車内は満席、岐阜で大阪からの編成(こ
ちらは指定を取れず)を連結し、10両編成で飛騨路を遡るが、川沿いの景色の良い路線だった。

列車での旅の楽しみは、なんといっても駅弁である。今回のターゲットは、名古屋名物「みそかつ弁当」。
大きな味噌カツが3切れも入り、味、量とも満足であった。


 <画像にカーソルを合わせると、フタが開きます>

12時すぎに、高山駅に到着。「ひだ」からの乗客がどっと降りるので、駅前は瞬間的に込むが、10
分もすれば閑散とする。




自転車を組み立て出発するが暑い。途中の道路脇の温度計は33度とか。
せせらぎ街道へは、町から西進するが、途中まで、東海北陸道の清見ICへ向かう道と同じのため、
車が数珠繋ぎである。はやく分岐点まで脱出したいが、緩やかな登り基調、ロード違って折りたた
み自転車、背中には一泊分の荷物、路側帯の殆ど無い道路ということもあり、なかなか距離が稼げ
ない。

ようやく分岐点に到着し、「せせらぎ街道」へ。しかし、まだこの辺りは谷幅が広く、渓流沿いに
なるには、もう少し遡らないと期待しているような光景にはならないようである。道が大きくカー
ブしているところに土産物屋らしきものがあり、休憩のため、立ち寄る。が、なんと漬物屋。店外
にも匂いが漂っており、漬物ダメ人間の私は、エアコンの効いているであろう店内には入れず、早
々に退散。余計に疲労したような。
谷幅が徐々に狭まり、らしくなってくる。人家は極めて少なく、自販機は、この先峠まで途中1ヶ
所しか見当たらなかった。朝7時前に出発し、14時頃になってようやく炎暑を逃れ、清流沿いの
静かな山間の小道にやってきたという感である。が、何かがおかしい。実はこの道、やたらと車が
多いのである。次から次へと、10台ぐらいずつの車列をなしてはやってくる。どうやら高山から
の抜け道になっているようである。
せせらぎ街道のピークは、西ウレ峠で、今日の最大の難関ある。高山から30kmほどの地点であ
るが、ときおり休憩しながら地図を見ても、なかなか峠に近づかない。ロードレーサーの感覚だと、
登りを加味しても、この勾配なら2時間位で行けそうであるが、折りたたみ自転車だと、1時間ぐ
らい余分にかかりそうである。
前方には邪悪な色をした雲も見えるが、すぐに来そうには無い。
民家は全く無い。清見ICとの分岐点からは信号も一度も無かったような。気温も27℃まで下が
り、走り初めよりはコンディションが良くなってきている。

 

途中、川原でクールダウンしながらようやく、標高1,113mの西ウレ峠に到着。気温は24℃。
ここで大休止し、ゆっくりと雰囲気を楽しもうと荷物を降ろした瞬間、ポツリとやってきた。峠の
てっぺんで雷にでもあったら最悪とばかり、慌ててチャリにまたがり、フルスピード下っていく。
幸いたいした降りにもならず、5分ほどで雨域を脱出。こうなると、峠でゆっくりできなかった事
が悔やまれる。

西ウレ峠にて
 
西ウレ峠を下った湧き水ポイントにて
 


予約時に廃業していた民宿の前を通過すると、道の駅「パスカル清見」に到着。かなり大規模な道
の駅だが、車もいっぱいで、ほんとに秘境に来ているのかという気になる。もっと静かな山里かと
勝手に思っていたが、お盆は日本中の車がフル稼働するのか盛況である。ここでソフトクリームを
食べ、クールダウン&休憩。

ここからもう一度登り返し、坂本峠を越えたところに今日の宿がある。

この峠には有料のトンネルがあり、これを利用する。トンネルに向かって再度登り始める。通常ト
ンネルは、全長をできるだけ短くするために、ある程度の高さまで上って突入するのがセオリーで
あり、トンネル突入前には、必ずといって良いほど、その序曲のようなのぼり勾配に挑む儀式が待
っている。地図で見ると、序曲の距離は短そうであるが、その間、どれぐらい登らされるかは読み
取れない。今日はいい加減勘弁して貰いたい心境だ。しばらく走ると旧道との分岐があり、これを
越えると、すぐのところにトンネルの入り口が待ち構えていた。あとはこのトンネルをくぐり、旧
道との合流地点まで下れば、今日の宿である。が、このトンネルがなかなかの難関であった。まず、
長さは1km強であるが、このルートの車はブンブン飛ばしており、路側帯皆無のトンネル内の車
道を走るのは危険この上ない。となると歩道を行くしかないが、幅は1mほどで、ちょっと高さが
高い。結局歩道に自転車を上て進むが、幅が狭い上に照明が暗い。すぐ隣りの車道は100km/
hぐらいで突っ走る車もある。照明の間隔が空いており真っ暗で路面が全く見えない区間もあり、
行灯並みのライトで何とか歩道の端を確認しながらの前進。ちなみにライトの無い吉永さんは歩道
から車道に落っこちたそうだ。落ちたタイミングで車が来ていたらと思うが、車が近づいていると
きは、車のライトで路面が良く見え、落ちる心配はないという皮肉な状況であった。ようやくトン
ネルを脱出。トンネルを出るとこちら側は長い下り坂が続く。トンネルの清美側と郡上側でかなり
標高が違うようだ。



料金所が現れるが、自転車は無料でパス。更にどんどん下り、旧道と合流したところで、民宿到着。
本日の走行距離は、約50kmながら、結構きつかった。


8月15日 快晴




2日目スタート。今日は約20km先の郡上八幡まで走り、軽く観光のあと、長良川に沿って岐阜
までのトータル80kmほどの走行予定。岐阜到着は、15〜17時ぐらいを見込んでいる。

昨日民宿到着後、頭痛がし始め熱射病の様相を呈していた。今日の岐阜地方の最高予想気温は37
℃。無対策では、もっと酷い症状になりかねない。対策その1として、まず民宿でペットボトルの
ドリンクをがぶ飲みする。お腹はチャポチャポ気味だが、今日は水分を多すぎるぐらいに取る作戦
で行く。対策その2として、民宿を出て10分ほどの道の駅で、着替えや、洗面用具など、不要物
を宅急便で家へ送った。これで1kg以上の減量。かなり軽くなった。更に対策その3として、岐
阜完走にはこだわらず、途中からのバス等の利用も検討する事を吉永さんと確認する。

道の駅から少し走ったところで、予め調べてきた国道とは対岸の道に入る。国道を離れると殆ど車
も来ない。昨日以来、ようやく車に煩わされないコースとなった。下り基調の道を2人並んでのん
びりと走ると、20kmはあっという間に過ぎ、郡上八幡の町中に入る。ずっと向かい風だったが、
やっぱり下りは楽ちんだ。

郡上八幡では、しばし観光。町中の川では地元の子供が泳いでおり、川原の結構高い岩から子供が
飛び込んだりしている。

水の町 郡上八幡到着
 
郡上おどり、今日(8/15)は翌朝までの
徹夜おどりとか
 
川原の道に下ります
 
 
少年が川原の岩の上から飛び込んでいます
 
ズームアップ
 
町中はこんな感じ
 
 
地元の子供たちが川に飛び込む新橋にて。
水面まで12mと看板に書かれています。


環境省が選定した「日本名水百選」の第1号に
指定された宗祇水
(でもこんなところを流れている水は、さすがの
吉永さんも飲めず)






水路や湧き水など1時間ほど散策し、郡上八幡より合流する長良川沿いに岐阜へと下る。岐阜へは
国道156号線が最短ルートだが、長良川沿いには国道のついている対岸に道が付いている区間が
多く、これらをつなぎ合わせると、約90%の区間が国道を避けて岐阜まで行けそうである。但し、
分岐のややこしいところや、一旦国道を使って対岸に戻らないといけない区間があったりで、とて
も覚えきれず、地図を印刷してきたが、郡上八幡〜岐阜間で丁度10枚になった。これで、進捗具
合がわかる仕掛けとなっている。
郡上八幡ICのちょっと北側で西岸に渡り、川沿いの道を下る。

 

またしても向かい風。吉永さんによると、「人生といっしょやな」との事。お互い辛いサラリーマ
ンの身である。やがて木々が日光を遮る木漏れ日ルートになったりで、快調にすすむ。途中から川
を渡ってきた長良川鉄道が平行し、1両のディーゼルカーが追い越していく。今日の熱射病対策に
は、その4があり、こまめに休憩を取るである。長良川鉄道の駅が現れたので、ここで休憩。勿論
無人駅だが、おばちゃんが掃除をしていた。列車は1時間30分に1本ぐらいの割合でしか走って
いない。
早くも本日3本目のスポートドリンクを購入。地図を見ると、郡上八幡からまだ1駅しか走ってい
なかった。

 

長良川沿いの道を下る。対岸を見ると、川より少し高い位置を国道が真っ直ぐについている。車は
結構多く、あちらを走ると、かなり車がストレスになりそうだ。

12時少し前、集落のスピーカーから、終戦記念日についての放送が聞こえてくる。

自販機をみつけ、ドリンクを飲んでいると、12時のサイレンが鳴り出した。二人、自販機の前で
直立して黙祷状態に入る。

国道がこちら側の岸に渡ってきたので、こちらは対岸の旧道にはいる。先ほどの黙祷で12時を過
ぎたが、旧道には昼食の取れそうなところや、店が全く無く、どこかで国道に出ざるを得ないかと
いう話になる。旧道の道幅の狭いところでは、車が待っていてくれたりする。横には長良川鉄道が
通っているが、建物が併設された駅に遭遇する。「みなみこだからおんせん」駅で、併設されてい
るのは温泉だった。食堂もあり、ここで昼食。エアコンにあたり、息を吹き返す。この時点で、郡
上八幡からの地図の4枚目の真ん中辺り、3.5枚目といったところ。まだ、1/3だ。

昼食後、ピッチを上げて走る。川に沿って下っている筈だが、この辺まで来ると殆ど平坦路の感覚
で、下りの感覚はなく、どちらかと言うと向かい風で、ややパワーをかけて漕がないと、距離が稼
げない。アスファルトから熱気が上がってくるのが感じ取れる。しかもこの付近の旧道は川の蛇行
につきあっているので、トンネルで突っ切る国道よりかなり大回りである。木陰も少なく炎天下の
舗道をひたすら進む。はっきりいって暑い。暑すぎる。

国道がまた渡ってきたので、再度対岸へ退避。この際、対岸へ渡るのに国道をほんの少し走るが、
車がドケドケと言わんばかりにスレスレで追い抜いていく。対岸の平穏な道に戻り、何度目かの分
岐後、大勢の人が川で水遊びをしているポイントに出る。が、川の流れが逆だ。いつの間にか支流
を遡っているようだ。幸い1kmぐらいのロスだが、引き返そうとすると、川遊びに向かうらしき、
ビキニの姉ちゃんがやってくるので、2人とも止まってしまう。吉永さんの評価は「ナイスバディ」。

更に走って、川のポンプ場らしき建物の陰で休憩。背後には高速の巨大なJCTが見えている。こ
の時点でやっと6枚目。しかも、この先は国道走りが待っている。
本来なら、この近くの関より伸びている名鉄美濃町を利用すれば、市街地走行を避け、楽々と岐阜
駅を辿り着けるところであるが、あいにくこの線は、2005年3月に廃線となっている。一部区
間は復活させようとの動きがあるものの、岐阜県は交差点部分の線路を撤去にかかっているらしく、
行政の非協力的な対応に阻まれているようである。(現役時代も道路上に安全地帯(電停)を作ら
せないなど岐阜県は公共交通軽視の姿勢という記事も目にした)

鉄道の代替バスを利用する手もあるが、駅を探して待っていれば乗れる鉄道と違って、バスはどこ
に乗り場(バスセンター)があるのかわからず、地元民以外には利用しずらい。
ちなみに長良川鉄道は岐阜へは行かず、岐阜の東方約30kmの美濃太田が基点になっており、使
いものにならない。

結局、国道を行く。路側帯が殆ど無いので、歩道を行く。途中、川を渡ったところで、名鉄美濃町
線の廃線跡の線路が平行し始める。線路はきれいに残っており、もったいないやら、もうしんどい
から、電車を走らせて乗せて欲しいやらである。

線路が併行しているが廃線跡。
よく見ると、架線もない。
 
途中の専用軌道部分。柵をどければ、
すぐに復活できそう。
 


やがて国道は川から離れていくが、我々長良川沿いの道を行く。地図も8枚目に入り、長良川リバ
ーサイドウェーという有料道路に入る。またしてもトンネルがあるが、自転車は歩道へ矢印があり
難なく通過。料金所が現れるが、ここも自転車は無料。今回のコースは岐阜の街へ北東方向から入
り、街の北側を流れる長良川に沿って西進し、最後に一気に駅に向かって街の中心を貫くように南
下するするルートになっている。しかし街の北東側にはお城の乗っかっている金華山があり、この
山の北側は長良川に接していおり、この部分は堤防上の道路もトンネルに突っ込んでいる。駅まで
10kmを切っているが、まだ山の中である。ただ、歩道部分はトンネルを迂回するように川沿い
についているので、トンネルの車道走りは回避できた。この辺までくると、さすがの吉永さんも頭
痛がするらしく、トイレの水道で頭から水をかぶりだした。
ようやく地図も10枚目に入り、遂に長良川と別れ大きく左折。ここを一直線に南下すると、岐阜
駅に命中する。安全を見て岐阜の基幹道路と思われる道の歩道を行く。17時頃だがお盆のためか
車は少なく、歩道の人通りも少ない。日も傾きビル影となる道を進むと、やがて岐阜の繁華街らし
きエリアに突入。歩道上の人通りが激増する。名鉄の駅を過ぎると巨大な岐阜駅に到着。17:1
5にゴール。走行距離は93.5km。予定より10km以上長いが、これは国道を避けて旧道伝
いのルートを取ったためだろう。

結局、この日の岐阜の最高気温は37℃ながら、
トータル、500mlのドリンク6本、缶コーヒー1本、クーリッシュ(アイス)1個と大量の水
分摂取と、こまめな休憩、それと登りが無かった事に助けられ、無事岐阜駅まで完走となった。

17:09の大阪行き「しなの」は出た後なので、17:53の大阪行き「ひだ」の切符確保のた
め、窓口へ急ぐ。窓口のお姉さんは、大阪行き「ひだ34号」を知らなかったり、名古屋からの切
符を検索(名古屋は通らない)して「そんな列車ない」と反応したりと散々で、こっちが端末の画
面を見ながら指示する始末。自分の勤務する駅の列車と行き先ぐらい知っとけと言いたいが、これ
が鉄道軽視の「岐阜流」か、はたまた殿様商法の「JR東海流」か。結局、禁煙の指定席は1席し
かなく、自由席を狙う。座れなければ、米原から新幹線に乗り換えるつもりだったが、奇跡的に1
列空いており、反対側の入り口から入ってきた客に先じ確保に成功。これで大阪まで着席が約束さ
れる。関が原付近では、勾配を迂回する方の線に入り、これについて吉永さんに解説していると、
やがて琵琶湖付近ではまん丸の夕日が地平線近くに見える。雲が紅く染まり、空はもう秋の気配で
あった。



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